成長が右肩上がりの介護業界はビジネスチャンスもあり新規参入しやすいため、「リスクが少ない」「簡単に成功できそう」などのイメージを持っているかもしれません。しかし、新規参入したすべての企業が成功しているわけではないのです。失敗している企業ももちろんあります。失敗する主な理由は、「ライバルが多く利用者を獲得できない」「制度改定に対応できない」「人材が確保できない」「法律などの縛りが厳しい」などです。この中でも特に悩みの種となっているのが人材確保です。
一般的に収益を上げるためには原価を引き下げて効率を上げなければなりません。飲食業をイメージしてみてください。料理の材料である食材を安く仕入れることができればその分、利益も多くなります。しかし、介護業界の原価は「人」です。人件費を安く抑えるためには人数を少なくしたり、給料を低く設定するしかありませんが、それでは職員の負担が増すばかりです。少ない給料できつい仕事を続けるのは大変です。辞めたいと思っても仕方がありません。
また、省令で「人員の基準」が定められています。必要な数の職員がいなければ「基準違反」となるため、国からの報酬がカットされ、最悪の場合は運営が取り消されてしまいます。そうならないためにも必要最低限の人数を確保しなければなりません。そのため、多くの企業は人材を確保するためにインターネットや広告に求人募集を掲載して人材を確保しようとしていますが、介護業界は求職者にとって有利な売り手市場のため、転職先はいくらでもあります。少しでもよい条件の企業に人が集まるのは当然のことでしょう。介護サービスを提供する人材が揃わなければ、機会損失だけが続き売り上げになりません。そのため、どちらかといえば中小企業よりも資本力のある大手企業の方が新規参入に成功しているようです。
職員をある程度確保できても肝心の介護サービスを利用する人がいなければ運営そのものが成り立ちません。ビジネスチャンスがあるということは、新規参入する企業も多いということです。参入する企業は増え続けており、特に有料老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅などの介護サービスを提供する企業の数は年々増えてきています。ひとつのエリアに同じような施設がいくつもある光景ももう見慣れたものでしょう。このような建物系の介護サービスは満床にしなければ利益が出ません。少しでも多くの入居者を獲得しようと競争が激化するのも当然のことです。